JR線新今宮駅北口を出ると、いきなりアルコールと吐瀉物、それに尿の臭いが鼻についた。予想だにしなかった洗礼に思わず、口を手で覆い隠す。それでも臭いは遮断が出来ず、自身にも酸っぱいような嫌な唾が競りあがってくる。
交差点の先には、今にも朽ち果てそうな廃墟のような建物…あいりん地区労働者センターがあった。まぎれもなく浮浪者という外見の人達や、場所とりを示す段ボール、はたまた日給いくらかと示された手配師の ワンボックスカー。それとヤクザ風の男で溢れていた。ヤクザ風の男…恐らく土建の手配師。甘い言葉に騙され、車に乗り込むと一生出られない要塞のような蛸部屋に放り込まれる…そんな都市伝説もあいりん地区ならあるだろう(実際にここ最近では福島原発に送り込まれるときいた)
当時20代前半であった私は、流石にセンターの中に入るのは躊躇われ(冷やかしだと、本気で求職をしている人間から危害を加えられそうと感じた)ひとまず街を散策することにした。
センターの近くでは数多くの露店が賑わっていた。意外にも、客層はホームレス風ばかりではなかった。一般人と思われる人々や、若者のの姿もちらほらみられる。
ホルモン焼きや100円惣菜、裏DVD、ブランドコピー、偽造テレカ、得体の知れない錠剤(今思えば抗精神薬か眠剤)、はたまたゴミにしか見えない商品を置く店が、神社の祭りのように我が物顔で連なっている。
何か掘り出し物は無いかと一通り商品を吟味し(裏DVDを10枚選ぶのに1時間弱は費やしたが…)私は少し寂しい裏路地に入った。電柱には殺す等の物騒な言葉や、オマンコ等の卑猥な言葉が赤や黒のスプレーで殴り書きをされている。暴力と性の混同に下卑た笑いを噛み締めていると、ひっそりと佇む怪しげな男と目が合った。男は片手でサインを送り、意味深長な目配せを送りながら陰険風な笑いを浮かべる。嫌悪感を覚えつつ、こいつは売人だと瞬時に直感をした。

その3に続く